こちらでは大神の資料に記されていた回天の発動手順・発進準備・回天停止手順について紹介しています。
①回天発動手順
②回天発進準備
③発進用意復へ(回天停止)
①回天発動手順
こちらで紹介する回天発動手順は回天を発動させるための前準備として搭乗員の方々が必死になり覚えたものです。
これがまともにできないと回天には搭乗することはできませんでした。
大神での訓練時には魚雷調整場にて整備員の説明を受けた後、搭乗員が回天に乗り込み以下のような手順を踏んで回天を発進できるような状態にしていました。
回天は魚雷と同様、空気・酸素・燃料の各種ラインをそれぞれ開き、発動弁を開く前の状態にする必要がありました。
ここで興味深いのは大神で残されていた『発動手順』と回天刊行会で元全国回天会の方が記された『発動手順』には差異が見られたことです。
一型と一型改一の基本的な構造は同じなので、この相違の理由はわかりません。
ここでは大神の資料に残されていた『発動手順』を元に回天刊行会の手順を加えたものを記しています。
番号を付しているものは大神の資料で〇印がついているものは回天刊行会で記されたものです。
注釈については回天刊行会で記されたものを引用させていただきました。
1.電動縦舵機起動
電動縦舵機の回転数が20,000回になるまで、5分ぐらいの時間を要しました。
○ベント弁閉鎖
○金氏弁(キングストン弁)閉鎖
2.操空塞気弁全開…31~33回(バルブ回転数)
操舵用空気の気蓄器間の弁を開く
3.縦舵機発動弁全開…3回
4.縦舵機排気弁全開…41~45回
5.安全逃気弁閉鎖
操舵空気は安全弁を開くことで、縦舵機の外に流れる。
開通確認後、閉鎖。不完全だと操縦室内の空気圧を高める。
6.潤滑油導水弁全開…3回。
回天の潤滑油は白絞油(菜種油を精製した油)を使用するが、海水で圧力を加えながら、
各部へ送り出す。
7.燃料中間弁全開…1回。
前後部の両燃料タンクの間の弁を開き流通。
8.起動弁全開…32~33回。
30センチ程度のハンドルを約90度の角度で静かに開く。
1液といわれるトリクレン(四塩化炭素)がサイフォンの原理で先行し、
安全に主空気(酸素)を燃料室へ導く。ただし臭いが甚だ強く揮発性も強い。
水の上におちると臭気が長く残留し、気絶することもある。
9.人力舵 面舵一杯取舵一杯舵中央。
○海水タンク調整弁閉鎖
潜入時ダウンをとった場合、前部タンクに移動。
反対に浮上時アップをとると後部タンクに移動してツリムがとれなくなり
危険なので、閉鎖する。
10.調速…○ノット。
斜め右上部にある調圧ロット作動を確認する。
11.調深…○メートル。
斜め左上部にある調圧ロット作動を確認する。
○特眼鏡作動確認
潜望鏡の昇降作動、左右旋回、倍率変換装置、分画目盛、
照準角目盛読み取り確認、俯仰角装置を確認。
12.斜進取(面)…○度
13.「ケッチ」…良し(電動縦舵機固定装置解脱)
14.深度導水弁全開…4回
15.時計…整合
発進用意終わり・上部ハッチ閉鎖
②回天発進準備
1.下部「ハッチ」…良し
2.二空…○キロ
3.操空…○キロ
4.人力舵…舵良し
5.調深…良し
6.調速…良し
7.特眼鏡…良し
8.斜進…良し
9.傾斜計…良し
10.(イ)起動弁…良し
(ロ)燃料中間弁…良し
(ハ)応急ブロー弁…良し
(ニ)縦舵機排気弁…良し
(ホ)深度導水弁…良し
(ヘ)操空塞気弁…良し
(ト)縦舵機発動弁…良し
(チ)潤滑油導水弁…良し
(リ)海水タンク注水弁…良し
(ヌ)海水タンク排気弁…良し
(ル)海水タンク中間切換コック…良し
(ヲ)内圧排気弁…良し
(ワ)気筒溜水排除弁…良し
③発進用意復へ(回天停止)
回天を停止させ、発進用意の状態に戻す手順です。
しかし、回天は車のエンジンのように完全に停止させると動かすことは不可能でした。
1.起動弁閉鎖
2.電動縦舵機停止
3.操空塞気弁閉鎖
4.縦舵機発動弁閉鎖
5.安全逃気弁全開
6.縦舵機排気弁閉鎖
7.潤滑油導水弁閉鎖
8.燃料中間弁閉鎖
横抱艇の収容を待つ