大神回天基地

A構造・メカニズム


bar2.png

 @船体構造
 A頭部
 B機関
 C回天の塗装
 D「一型」と「一型改一」の違い

@船体構造

  
 一型の全長14.5mで胴体の直径は1m、安全潜航深度は80mです。

 全体は頭部・胴体・九三式酸素魚雷三型の構成になっており、胴体前部には九三式酸素魚雷の酸素気蓄器(装気圧215kg/cm2 775L)、燃料室(ケロシン96L)、上部に操舵用の気蓄器(装気圧215kg/cm2 775L)×6、中央下部にはツリムタンクが2群装備されていました。

 胴体後部には操縦室があり、座席を中心に胴体前部には深度改調把手(調深装置)・速力改調把手(調圧装置)・解脱桿把手・特眼鏡などがあり、後ろには発停把手や起動弁がありました。

 そのさらに後ろには九三式魚雷の酸素気蓄器(装気圧215kg/cm2 775L)、燃料室(ケロシン96L)、主機械油室(潤滑油)、ツリムタンク3群、そして、最後部には九三式酸素魚雷室になります。

回天一型・一般配置図
回天一型・一般配置図

 全重量は8.1トンで、回天の浮力は人が乗ってない状態で+100程度、100リットルネガティブタンクを満水にすると、0か−になると言われています。
 浮力の調整は潜水艦のように排水ができないため神経を使ったといわれています。

back_small.png pagetop_small.png

A頭部

  
 頭部は戦備に装着した実用頭部(爆装)と訓練用の駆水頭部の2種類がありました。

 実用頭部には1.55tの炸薬(九八式爆薬)が充填されていました。
 起爆させる信管には、命中と同時に自動的に起爆する「慣性信管」に九三式魚雷と同じ「二式爆発尖」を採用しています。また爆薬を搭乗員の判断で爆破させる「電気信管」を手に持ち身体が前のめりにスイッチが入るような姿勢をとって確実に爆発するようにしていました。

回天一型改一実用頭部外観・内部図
回天一型改一実用頭部外観・内部図

 命中までは、途中で衝撃を受けても爆発しない様に、安全装置(信管安全解脱装置)が装備されていました。これを、信管を作動可能状態にするには搭乗員が右手を上前方に伸ばして、安全解脱装置の把手を10回廻す必要がありました。

 解脱装置の把手を手前に一杯引くと、安全装置を掛かりますが、再度、信管作動可能の状態にするには90回も廻す必要がありました。

 駆水頭部は850Lの深度駆水室と300Lの応急駆水室からなり、訓練時には海水をいれて訓練をしていました。これは黒木大尉と樋口中尉の殉職事故後に回天が海底に突入してしまうことを防ぐ目的で開発されました。

「回天一型・一型改一」用訓練用弾頭前期内部側面図
「回天一型・一型改一」用訓練用弾頭前期内部側面図

回天一型駆水頭部(構造簡素型)
回天一型駆水頭部(構造簡素型)・光市文化センター所蔵
画像は「安芸の国から」様より

 深度駆水はある一定の深度を超えた場合、応急駆水室は操縦室内の応急駆水弁を開いた場合に頭部の海水を排出できる仕組みになっていました。
 深度駆水室の深度器は回天が15m以上潜入した場合に作動するように調整されていましたが、実際には5mほどの誤差があったため、10mで設定されていました。深度器の調整は、板を入れバネの張力の強弱を調整する事で行います。この設定は固定式なので変更する場合、駆水室を分解する必要があります。
 緊急時(15m以上沈んだ場合等)には搭乗員が応急ブロー弁を操作し強制的に浮上させるようになっていました。しかし、一型には装備されず、一型改一で「応急ブロー弁」として装備されています。

 もし事故等があった場合、応急ブロー弁を作動させると「シューン」という音とともに駆水頭部から排水が始まり、艇は次第に仰角を取り、駆水頭部を水面上に出して海水中に直立します。
 追蹤艇は海面から出た露出部分を発見し、潜水夫が頭部を金槌で「カン・カン」叩き内部の状況を確認して、回天側からも応答します。そして、横抱艇で元に戻されて基地に帰還していました。
 回天内部で生存できる時間は2人乗りの場合、10時間が限度といわれています。

 また駆水頭部には訓練時の走っている間の深度・速力の数値を記録紙に残す「雷道記憶装置」が装備されていました。本来は魚雷の性能を調べるために開発されたものですが、回天にも同じようなものが装備され、訓練が終わった後、データを詳しく読み取り、分析して運動性能を調べることが可能でした。

back_small.png pagetop_small.png

B機関

  
 九三式酸素魚雷三型の機関を採用しています。
 純酸素とケロシン(白灯油)を燃料とし、燃焼室に噴射、火管によって点火されると高温燃焼・高温ガスを発生します。
 そこに霧状にした海水を噴射すると高温高圧の蒸気を発生させ、その蒸気によって二気筒のピストンを動かし、550馬力を生み出すのです(この状態を「熱走」と呼んでいました。逆に火が着かず装填空気圧のみで動くことを「冷走」と呼んでいました)。
 推進力となった蒸気は二酸化炭素を含んでいるため海水に溶け易く、気泡が発生しないので、航跡が発見されにくくなっていました。

 この機関は最初の発火時点で100%の酸素を使用すると爆燃し超高温によって燃焼室が溶けてしまう「気筒爆発」を起こす危険性があります。そこで酸素の前に消火剤として使用されていた「四塩化炭素」を先行させ、爆燃力を抑制し、徐々に酸素濃度を上げていったのです。

 しかし、燃焼剤として酸素を使用するため、整備に非常な手間がかかり、1回の発射に地上で3日の調整が必要でした。十分な訓練期間がない以上、回天の整備隊は3日で2回のペースで調整するよう督促されていたのです。

back_small.png pagetop_small.png

C回天の塗装

  
 回天の塗装は次のようにわけられていました。

 実戦的…敵から発見されにくくするために艶消し黒(フラットブラック)を塗っていました。

 訓練的…胴体上半分を白に塗装しています。波切り部分を黒く塗ったものも存在しました。その違いの理由はわかっていません。

回天塗装例図
回天塗装例図

試作三号的
大津島回天基地で撮影された試作三号的。
上半分が白く塗装されています。
(希少艦艇資料研究所様より)

 訓練中の的を見失わないように、舷外灯を上部ハッチの後ろに点けたり、シーマーカーを流すも効果はありませんでした。
 菊水紋は波きりの前面に描かれていたが、同じ場所に艇番号も書かれていました。また波きり板の後ろ部分に書かれたものもあります。出撃時には全て黒く塗り潰されていました。
 (平生町観光協会のホームページには平生基地での終戦当時撮影された写真が掲載されています。訓練的の塗装や番号の記載がわかる写真です。)

back_small.png pagetop_small.png

D「一型」と「一型改一」の違い

  
 大神基地で使用された回天は戦時日誌から「一型改一」を受領したことがわかっています。
 この「一型改一」は一型の「事故対策」「不備」改正を目的とし、量産向きにするために構造を簡素化しています。また全重量は8.3トンになっています。改正点は以下の通りです。

回天一型改一・一般配置図
回天一型改一・一般配置図

(注)回天一型改一の正式な図面は残されていませんが、
この図面は遊就館に現存する回天一型改一から採寸したことを
原作者に再度問い合わせ・確認しました。(140425・管理者)


回天一型改一
遊就館に展示されている回天一型改一。
ただし後部機関部分は復元したもの。白線より後ろ部分。
後部機関部分と操縦席を繋ぐ部分の形状に注意。
(Wikipediaより・一部編集)

 @波きりの形状改正…低速で観測時に波しぶきによる影響を受けにくくするためです。
 A四塩化炭素が魚雷内から、操縦室後部へ移設…四塩化炭素の金属腐食で筒内爆発事故があり、
  出撃直前に四塩化炭素の入ったボトルを装着していました。
 B100L海水タンクの新設・ネガティブタンクの固定化…ゴム製から鋼製に変更しました。
 C前部トリミングタンクの増設
 D魚雷内の操縦用圧搾空気(13L×3本)を艇内(20L×2本)へ
 E制御装置の簡素化
 F推進機関の閉鎖
 G駆水室に応急ブロー装置の新設
 H燃焼圧メーターの新設
 Iフレーム間隔の均等化(25cm)
 J全長が25cm延ばされる(全長14.75m)

回天一型・一型改一対応表
回天一型・一型改一対応表

 ※NAVAL UNDERSEA MUSEUM(リンク先は個人サイト「VV_VV」様)には「一型改一」(もしくは「一型改二」)が展示されてあります。
 リンク先の画像は操空気蓄器などの内部が観察しやすい展示方法になっており、操空気蓄器の右半分4つあるのが確認できます。
 この回天は平成13年8月24日に全国回天会が現地に赴き、「一型改一」であることを確認しています。(会報「特攻」第50号・平成14年2月「在米回天探査の旅」より)

 生産は昭和20年に入ってから開始されました。しかし、昭和20年になっても一型が全く製造されなかったわけではなく、一型改一と並行量産されていて、「受領報告」が平生基地の戦時日誌に残っています。一型が並行生産された理由ははっきりとしていません。

 (平生町観光協会のホームページの写真にある285号は「一型改二」と言われているものです。特徴は飛び出した2本の気蓄器ですが、なぜこのような加工がなされたのか不明です。)


home.png contents.png back.png pagetop.png
inserted by FC2 system